ゲーミングPCを選ぶうえで見落とされがちだが、非常に重要度が高いのが冷却に関する問題だ。PCを適切に排熱することは安定した動作だけでなく、PCの寿命を延ばすことにもつながる。
この記事では空冷式と水冷式、二つの冷却方法の仕組みやメリットデメリットを解説するとともに、おすすめモデルも紹介していく。
- ゲーミングPCの冷却機構が重要な理由
- 空冷式の仕組みとメリット・デメリット
- 水冷式の仕組みとメリット・デメリット
- 空冷式と水冷式を選ぶ際のチェック点
ゲーミングPCは適正温度の維持が重要
ゲーミングPCの寿命を延ばし持っている性能を適正に発揮するには、本体の温度管理が非常に重要だ。PCパーツは稼働する際に、大量に熱を発する。PCを使っている時に、本体が驚くほど熱を持っていたという経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。
高性能なパーツは多くの電気を必要とするため、そのぶんだけ多くの熱が発生する。ゲーミングPCに使われているパーツは基本的にハイクラスなものが多いので、本体内部が60度を超えることも珍しくない。そのため、PC本体内で発生した熱を冷ますための冷却機構が非常に重要になってくるのだ。
空冷・水冷のおすすめゲーミングPC 4選
ゲーミングPCに限らず多くのPCは、空冷式に比べて水冷式モデルのほうが価格は高めだ。ここでは、そのなかでも特にコスパの高いモデルを紹介していく。
空冷式のおすすめモデル
パソコン工房 iiyama LEVEL-M7P5-R57X-RLX

画像引用:パソコン工房
メーカー | パソコン工房 |
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モデル | LEVEL-M7P5-R57X-RLX |
CPU | Ryzen 7 5700X |
GPU | GeForce RTX 4060 |
メモリ | 16GB (8GB×2) |
ストレージ | SSD 500GB |
FPS目安 | 169.925~255.008fps |
価格 (税込) | 144,800円~ |
- フルHD環境でそれなりの高画質環境を維持したい人
- Apex Legendsを144fps張り付きでプレイしたい人
パソコン工房のLEVEL-M7P5-R57X-RLXは最新世代のGPU「GeForce RTX 4060」を搭載している、バランスの良い構成のゲーミングPCだ。
フルHDなら現行タイトルの大半は快適にプレイ可能で、軽めのゲームなら高画質設定にしてもfpsを維持できるのが魅力。
トップフロー型の空冷クーラーを採用しているので、CPUだけでなくマザーボード全体をまんべんなく冷却できるのがポイントだ。
メモリを32GBにカスタマイズすれば、より快適なゲームプレイを楽しめる。バランスが良く、使い勝手の良いマシンが欲しい人におすすめのモデルだ。
マウスコンピューター NEXTGEAR JG-A5G6T

画像引用:マウスコンピューター
メーカー | マウスコンピューター |
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モデル | NEXTGEAR JG-A5G6T |
CPU | Ryzen 5 4500 |
GPU | GeForce RTX 4060 Ti |
メモリ | 16GB (8GB×2) |
ストレージ | SSD 1TB |
FPS目安 | 134.2~201.299fps |
価格 (税込) | 144,800円~ |
- エントリークラスのゲーミングPCを探している人
- 低画質設定でゲームを快適にプレイしたい人
NEXTGEAR JG-A5G6TはマウスコンピューターのエントリークラスゲーミングPCだ。エントリークラスといっても最新世代のGPU「RTX4060Ti」を搭載しており、Apex LegendsやVAROLANTなどの人気タイトルを、低画質設定で快適にプレイできるスペックを持っている。予算に余裕があればCPUをアップグレードすれば、144fps張り付きも目指せるだろう。
トップフロー型の空冷クーラーにくわえて、計6基のファンを取り付けられる充分なスペースを確保しているのもポイント。長時間の使用にも耐えるタフな仕様だ。
エントリークラスには珍しく1TBのストレージを搭載しているので、大量にデータを保存したい人にも向いている。
水冷式のおすすめモデル
STORM PG-KBPFSTi47

画像引用:STORM
メーカー | STORM |
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モデル | PG-KBPFSTi47 |
CPU | Core i7 13700F |
GPU | GeForce RTX 4070Ti 12GB |
メモリ | 32GB |
ストレージ | SSD 1TB |
FPS目安 | 201.227~301.76fps |
価格(税込) | 325,000円 |
- 数年使えるゲーミングPCがほしい人
- 白いボディとLEDでデスク周りを演出したい人
PG-KBPFSTi47は、「白いゲーミングPC」に力を入れているSTORMのミドルハイクラスモデルだ。バランスの良いパーツ構成で、グラフィックが売りのゲームも快適にプレイできるスペックを持っている。
真っ白いボディに華やかなLEDイルミにくわえて、画像表示機能付き簡易水冷が庫内を彩る。画像表示付き簡易水冷は、CPUとGPUの状態がひと目で分かる優れもの。見た目と機能を両立したアイテムだ。スペックとルックスを両方満たすゲーミングPCを探している人にぴったりのモデルといえるだろう。
パソコン工房 iiyama LEVEL-R779-LC139KF-TLX

画像引用:パソコン工房
メーカー | パソコン工房 |
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モデル | LEVEL-R779-LC139KF-TLX |
CPU | Core i9 13900KF |
GPU | GeForce RTX 4070 12GB |
メモリ | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | SSD 1TB |
FPS目安 | 231.115~346.728fps |
価格 (税込) | 319,800円~ |
- コスパの良いパーツで構成されたゲーミングPCがほしい人
- 重量級のゲームを快適にプレイしたい人
LEVEL-R779-LC139KF-TLXはCorei9 13900KFとRTX4070というハイクラスなパーツで構成されたゲーミングPCだ。現行の人気タイトルはもちろん、スターフィールドやアーマードコア6など、要求スペックの高い重量級のゲームもストレスなく楽しめる。
360mmの大型水冷クーラーで庫内を強力に冷却できるので、長時間のゲームプレイも安心だ。
メモリは32GB、ストレージは1TBと充分な容量が搭載されているので、カスタマイズなしでOKなのも嬉しいポイント。
余裕を持ったスペックで遊べるゲーミングPCがほしい人におすすめのモデルだ。
注:価格は2023年12月時点のものです。
注:fpsはあくまでも目安です。設定や環境によって前後します。Apexを高めの設定のフルHDでプレイした場合の数値です。
ゲーミングPCにおける空冷と水冷の違い
PCの冷却機構には空冷式と水冷式がある。漠然とした違いは分かるが、その仕組みまではよく知らないという人も多いのではないだろうか。
ここでは、両者の違いやメリットデメリットを解説していく。
空冷式の仕組み
空冷式はファンを使って、PC内に溜まった熱を庫外へ排出する。冷却といって真っ先に思い浮かぶ、一般的な方法といって良いだろう。
CPUが発する熱をヒートシンクが受け取り、それをファンが外へ吹き飛ばす仕組みになっている。CPUとヒートシンクの間には、グリスという熱伝導率を高める液体を塗布する。このグリスの性能によっても冷却性能が変わるため、BTOパソコンのなかにはグリスの種類をカスタマイズできるメーカーもある。
多くのゲーミングPCで採用されている冷却方法だが、どのようなメリットがあるのか詳しく見ていこう。
空冷式を使うメリット
空冷式を採用する最も大きなメリットのひとつとして、コスパの良さが挙げられる。空冷ファンは基本的に安価で、大型のものでも1万円を超えることは少ない。種類が多く、性能や内部のスペースに合わせて選択の幅が広いのも特徴だ。サイドフロータイプならファンを2個付けして、より冷却性能を高めることもできる。
また、空冷式ファンは構造がシンプルなので故障や破損が起きづらく、取り付けが容易であることもメリットといえるだろう。
空冷式を使うデメリット
コスパが良く使い勝手が良い空冷式だが、それなりの弱点もある。
空冷式ファンは発生した熱を風の力で吹き飛ばすシンプルな仕組みだが、高熱を発するハイクラスCPUに対しては若干パワー不足な面も見られる。
また、効率良く熱を排出するためには他パーツとの干渉を避けつつ、エアフローを設計することが求められる。設計や周囲の環境次第では空冷ファンの性能を活かしきれないこともあるので、注意が必要だ。
水冷式の仕組み
水冷式は、放熱部分を循環しているクーラント(冷却液)に熱を移す仕組みだ。熱を持った冷却液はポンプで圧をかけて冷却部分まで運ばれ、外へ放熱される。
空冷式と比べて高級志向というイメージが強い方法だが、どのようなメリットがあるのか具体的に見ていこう。
水冷式を使うメリット
水冷式最大のメリットとして挙げられるのが、高い冷却機能だ。クーラントを常に循環させているので、空冷式よりも高い冷却効果が期待できる。
高熱を発するハイクラスCPUを長時間稼働させてもしっかり冷却してくれるので、動画配信やクリエーター用途にも安心して使えるのがポイント。
また、ケースがラジエーターに対応していれば、他パーツと干渉しづらいのもメリットのひとつだ。
ヒートシンクがないので庫内がすっきり見え、ガラスパネルが映えるデザイン性の高さも水冷式の魅力といえるだろう。
水冷式を使うデメリット
簡易水冷式のクーラーは、空冷式よりも高額な傾向がある。120mmラジエーター搭載の水冷クーラーには安価なものもあるが、240mm以下のラジエーターの冷却機能は空冷式と大差ない。水冷式を選択するのなら、240mm以上が基本になると考えて良いだろう。
もうひとつのデメリットとして挙げられるのが、メンテナンスの手間だ。水冷式はクーラントを循環させているので、ファンの回転数が低下すると冷却機能が格段に落ちてしまう。
そのため回転数やクーラントの量、ホースの状態を定期的にチェックする必要がある。手軽さという点では、ほぼメンテナンスフリーで運用できる空冷式に軍配が上がるだろう。
簡易水冷と本格水冷の違い
一般的に「水冷型ゲーミングPC」というと、CPUのみを冷却する簡易水冷を指す。最近ではハイクラスGPUのなかに簡易水冷型のモデルが出ているが、まだ普及しているとは言い難い。
パーツを冷却するという目的ならば簡易水冷で充分だが、より高い冷却効果とデザイン性を追求したのが「本格水冷型ゲーミングPC」だ。
本格水冷は庫内全体にハードチューブやホースを配置し、すべてのパーツを冷やすことができる。コストと制作難易度が桁違いなのでコスパ度外視にはなってしまうが、デザイン性の高さは随一だ。
ハードチューブとLEDライティングを駆使して、華やかなオリジナルマシンを組む自作愛好家も多い。
空冷と水冷、結局どっちがいいの?
コスパに優れた空冷式。高い冷却効果を持つ水冷式。結局どちらを選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないだろうか。
結論から言うと、エントリー~ミドルクラスまでのCPUなら、空冷式で充分対応可能だ。むしろ水冷式を選ぶとオーバースペックになってしまう可能性もある。
以前は水冷式のほうが静音性が高いとされていたが、実際に使ってみるとそれほど大きな差は感じられない。また、メンテナンスの面からも空冷式のほうが扱いやすく、初心者向けといえるだろう。
ただし最近のハイクラスCPUは水冷を推奨しているものも多いため、ハイクラスモデルを選ぶなら水冷のほうが良いこともある。
ケースバイケースではあるがエントリー~ミドルクラスまでは空冷式、ハイクラスには水冷式と考えておけば良いだろう。
ゲーミングpcのCPUクーラー(水冷・空冷)を選ぶ際にチェックしたいポイント
CPUクーラーを選ぶ際には、いくつかチェックしておきたいポイントがある。ここでは外せない3つのポイントを解説していきたい。
冷却性能
CPUクーラーを選ぶ際に最も重視するのが、クーラーの冷却性能だ。空冷式の場合はヒートシンクの大きさ、水冷式のラジエーターの大きさが冷却性能に直結する。
あまり大きすぎると他パーツとの干渉が気になるが、可能であれば余裕を持ったスペックのクーラーを選ぶほうが安心だろう。
CPUのソケット形状やサイズ感
CPUクーラーを取り付けるソケットとマザーボードのCPUソケットは、それぞれ対応しているものでないと取り付けられない。また、設置したときに他のパーツに干渉しないかも確認しておく必要がある。
カスタマイズ済みのBTOパソコンを購入するならあまり気にする必要はないが、自分でCPUクーラーを付け替える場合、これらのチェックは必須項目だ。購入前に両方のソケットをよく確認しておこう。
静音性能
ファンから発生するモーター音は「dbA(デシベルエー)」という単位で表記されている。基本的には大きいファンほど回転数を抑えられるので、静音性が高いといえるだろう。
個人差はあるが30dbA程度であれば、長時間稼働してもノイズはさほど気にならない。使用環境やケースの大きさに合わせて、できる限り静音性に優れたモデルを選ぶようにしたい。
まとめ:ゲーミングpcの冷却は、空冷と水冷どちらを選ぶべきか
この記事ではゲーミングPCにおける空冷式と水冷式の違いやその仕組み、選び方について解説してきた。
- ゲーミングPCは高性能なパーツを多用しているので、冷却機構が非常に重要
- 空冷式はヒートシンクで熱を受け取り、ファンで外に排熱する
- コスパが良くシンプルな構造であるというメリットがある反面、ハイクラスCPUにはパワー不足な面も
- 水冷式はクーラントに熱を移し、ファンで外に排熱する
- 非常に冷却効果が高いがそのぶん価格も高めで、メンテナンスに知識が必要な面も
- エントリー~ミドルクラスから空冷式、ハイクラス以上なら水冷式がおすすめ。本格水冷はコスパ度外視の自作愛好家向け
- CPUクーラーを選ぶ際には冷却性能、ソケットの対応可否、静音性能をチェックして選ぶ
ゲーミングPCを選ぶ際、CPUやGPUのスペックに目が行きがちだが、安定した稼働にはCPUクーラーの存在が欠かせない。使用時間や環境、ゲームのプレイスタイルなどを考慮して、最適なCPUクーラーを選ぶようにしよう。